最終更新日 2024年5月17日 15:18 aki kitsune
都市ガスとプロパンガス
都市ガス
原料:液化天然ガス(LNG)
主成分:メタン
発電や都市ガスなどに用いられる天然ガスは、輸送・保管を容易にするため「液化」状態にされ、これを液化天然ガス(以下、LNG)といいます。
日本は四方を海に囲まれていることなどから、「天然ガスパイプライン」を通じて輸入することができないため、天然ガスの輸入はほぼすべて液化された天然ガス(LNG)を船などで運んでいます。
LNGの輸入量は、2020年時点で日本が1020億立方メートルで第1位です。次いで中国の940億立方メートル、韓国553億立方メートル、インド358億立方メートル、台湾247億立方メートルなどとなっています。
日本がLNGを輸入している相手国は、オーストラリアが第1位で396.5億立方メートル、次いでマレーシア148.1億立方メートル、カタール119.4億立方メートル、ロシア83.7億立方メートル、ブルネイ54.0億立方メートル(いずれも2020年)などで、およそ4割がオーストラリア産です。
ちなみに、天然ガスの総輸入量では中国が1391億立方メートルで第1位(内訳はLNG940億立方メートル+パイプライン経由の天然ガス451億立方メートル)、2位の日本は100%LNG輸入、3位はドイツでパイプライン経由の天然ガス100%で輸入量は日本と同じ1020億立方メートル、4位は米国でLNG13億立方メートル+パイプライン経由天然ガス682億立方メートル、次いで、イタリア・メキシコ・韓国・英国と続きます。(ベース資料:
資源エネルギー庁 エネルギー白書)
2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻で、ロシアからの天然ガス輸入に依存していたEU諸国が輸入禁止に踏み切ることはどれほど大きな影響であるかがわかります。
プロパンガス
日本で一般的にプロパンガスと呼ばれているのは、液化石油ガス(liquefied petroleum gas:LPG:LPガス)で、主に次の方法で作られます。
・油田から原油を生産する際に発生するガスから分離させ製造
・ガス田から天然ガスを採取する際に分離させ製造
・石油精製・石油化学工場で複製するガスから分離させ製造
LNGは、輸入後、液化天然ガス(LNG)タンクに貯蔵され、高圧導管→中圧導管→低圧導管と各変圧器を経てそれぞれの需要先(家庭や工場・飲食店など)に供給されます。
プロパンガスは、輸入後、LPガスタンクに貯蔵され、そこからタンクローリーで充填所に輸送、充填所でLPガス容器(プロパンガスといえばアレというグレーのボンベ)に詰め替えて、それぞれの需要先(家庭や工場・飲食店など)に配達・設置されます。
ここでお気づきのように、都市ガスは天然ガスタンクから各家庭に届けるまでに「大規模なインフラ」整備が必要となりますが環境が構築されれば家庭などの各需要先に「配達」する必要はありません。これに対してプロパンガス(LPG)は、輸入→ガスタンク→充填所→販売店(充填所直送の場合もある)→各家庭というフローとなり、「配達」の手間が多くなります。
液化天然ガス(都市ガス)と液化石油ガス(LPG)の値段
以下は、液化天然ガス・液化石油ガスのCIF価格を示したものです。
CIF価格とは、輸送による運賃や保険料、為替変動を組み込んだ価格で、日本における実質的な価格となります。
2018年6月~2022年4月の価格推移
※1MTあたり、千円
※MT:メトリックトン:メートル法でのトン(1,000キログラム)
※出典:財務省
上図の4月期だけを比べてみても、2022年の数値が非常に高くなっていることがわかります。原油高に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の影響、そして、円高影響。これからいったいどこまで上がるのでしょう。
プロパンガス(LPG)と原油価格の関係
LPガスは、油田や天然ガス田の中に含まれるガスが原料となっています。
この原料となるガスを、精製・分離することで、家庭などに届けられるLPガスが作られています。
LPガスの原料との一つとして原油が存在するため、原油価格が上がると、それを基に作られるLPガスの価格も連動して高くなります。
原油価格の変動の仕組み、それに伴うLPG価格の決まり方(CPやMBなど)については、とても長くなるので別の機会に。
プロパンガスはガソリンと同じ「自由料金制」
一般的に都市ガスよりも高いといわれるプロパンガス。
プロパンガスの料金は、ガソリンや灯油の価格設定方式と同じで、事業者が自由に価格を決めることができる「自由料金制」が採用されています。
プロパンガスは、元売り単位や地域単位で決められた価格がある訳ではなく、事業者ごとに価格を決めることができます。
ガソリンスタンドが同じ販売会社でも給油所(店舗)によってガソリン価格が違うことを、「ここは安売り激戦区だから」「地方国道で近くにスタンドがないから」というように、私は当然のことと理解していました。そのようなものだから、何ら疑問に持たずにいましたので、ガソリンや灯油が「自由料金制」のもとに価格決定されている仕組みなど知りもしませんでした。
つまり、プロパンガスも「自由料金制」なので、事業者が独自に価格を決めることができ、ガソリンスタンドのように売る場所や売り先ごとに異なる価格で提供しても良い、ということになります。
ガソリンも、運送やタクシーなど多くの燃料を必要とする事業者には、事業者向けの価格設定をしていることもあります。私が以前勤めていた会社も社用車の給油はほんの少し割引されていました。
自分の住んでいるマンションを調べてみたところ…
価格を自由に決めることができるということは、ある事業者がプロパンガスを供給する隣同士のアパート2軒で別々の価格設定とすることもできるし、現実的に面倒だからやらないでしょうけど部屋ごとに異なる価格設定ということも可能?と思いまして、私が住んでいるマンションの顔見知りに片っ端から「ガスの請求書見せて」とお声がけしてみました。
結論は、「基本料金+従量単価」いずれも同じでした。
確認したのは、鉄筋コンクリート造3階建てのひょろ長い建物で、全入居者の3割くらいです。
Google先生に自分が契約しているプロパンガス事業者を訊いてみる
どうやら、市内の平均価格よりも1割ほどお高い模様…。
さらに調べてみると、プロパンガス価格地域比較みたいなサイトがわんさかありまして、平均価格・適正価格などなどいろんな情報を知ることができました。多少のばらつきはあるものの、どこもだいたい似通った数字でした。
そこで、いくつかのサイトで、下記のような内容が説明されていました。
賃貸の集合住宅では、必ず建物の「持ち主」がいらっしゃいます。個人の大家さん・オーナーの場合もあれば、法人の場合もあるでしょう。集合住宅の場合、プロパンガスの事業者は、部屋ごとに契約をする前に持ち主(この先、オーナーとします)と契約を締結することになります。
つまりアパートやマンションなど通常の集合住宅の場合には、ガス会社は一部屋ごとに契約する前に、ガス会社とオーナーが一棟まとめて契約しています。
前提として、借主の方が一部屋ごとに違うガス会社を選ぶことはできません。
プロパンガス会社がオーナーと契約する際、本来であればオーナーが負担すべき建物の設備を修繕・交換する費用、例えばエアコンや給湯器などをガス会社がサービスで負担するということが、通例・いわばプロパンガスと不動産業界の常識となりつつあります。
プロパンガスの事業者としては、このようなサービスを行うことによって、少しでも多くの顧客を獲得したいという狙いがあります。また集合住宅の契約では、ある程度まとまった顧客数が確保できる上、複数年契約を結ぶことが多いため事業者のメリットが大きいのです。
複数年契約は、オーナーとガス会社が10年や15年など長期間の供給契約を結ぶもので、事業者としては「設備費用を負担する代わりに、解約しないでください」ということになります。費用負担したのに、すぐ解約されてしまっては赤字ですので当然だといえるでしょう。
集合住宅でのプロパンガス料金は、ガス会社がこのような設備費用の負担があることを加味した上で、料金設定を行います。
従って、集合住宅でのプロパンガス料金は高くなってしまう傾向にあるのです。
また賃貸物件の入居者は「ガス会社を変更する決定権」を持っている訳ではありません。あくまでも決定権はオーナーが持っているため、ガス会社側としては「解約されてしまうリスク」というものが引っ越されない限りはありません。
そのため集合住宅のプロパンガスは相場の金額自体が高いという側面があることも事実です。
設備投資を受けていない建物であったとしても、必要以上に高く設定されていることが多くあります。
一方で一戸建て住宅の場合、そのような設備負担の慣習はないため、ガス会社としては個々のお宅で限界値まで料金を下げることが可能となります。(
プロパンガス料金比較サイト)
ほほう…。
マンガの正直不動産みたいなことがあるんだろうなぁ…。
いずれのサイトにも、プロパンガスを採用している集合住宅でガス料金を下げるには、「オーナーに相談してみる」とか「住民が一致団結して交渉する」とか「分譲の場合は理事会で」などなどと紹介されていて、そうなりますよね。
結局のところ、入居時には「ランニングコスト」についても気を配っておかないとならないということを学びました。
これから、アパート・マンションにお引越しや入居を考えている方は、不動産屋さんに「ガスは何?ガス料金はどれくらい?」ということを確認されると良いと思います。
そんなある日、「ガス会社が変わります」と郵便受けに通知
入居して1年ほど、ガス代高いなぁと思って調べていたある日、オーナー様(ウチのオーナーは不動産関連会社法人)の通知ということで、「ガスの管理会社が変更となる」こと「各戸個別に事業者と契約(承諾)してください」旨のポスティングが管理会社からありました。
むむむ…(古)。
まさか、ガス代高くならないだろうな…
真っ先に思いました。「高くならないだろうな」と。
幼なじみの弁護士に訊いてみたところ、
もしもガス料金が今よりも高くなってしまうんだったら、入居後の契約期間中の変更で、原油高とか社会情勢的な理由じゃなく、オーナー側の都合でガス料金が値上げになるということなら、借主が一方的に不利益を受けるんだから拒否してもいいと思うよ。賃貸借契約条項の何か持ち出して追い出されるかもしれないけど(笑)、いまは消費者優先だから大丈夫じゃね?
と、幼なじみの会話だけに適当な回答。
(つづく)
新聞記事から
LPガス料金、月数千円を上乗せ 違約金20万円請求の業界慣行も
戸建てやアパートに設置したガス配管や給湯器などの費用を、月々のガス料金に数千円上乗せして徴収する慣行が、LPガス(プロパンガス)業界で続いている。消費者がガス会社を変更しようとすると高額の違約金を求められることもある。経済産業省は、料金体系を透明化するよう業界に求めている。
LPガスは都市ガスの配管網がない地方を中心に、国内の約4割の世帯が使っていて、ボンベなどで供給されている。
この慣行は業界内で、戸建てでは「貸し付け配管」と呼ばれ、LPガス会社が住宅内のガス管を無償で設置する。アパートでは「無償貸与」といわれ、各部屋の給湯器やガスコンロ、エアコンなども無償で設ける。住宅会社や不動産会社は設備費用を負担しなくて済む見返りとして、住宅購入者や賃貸契約者にガス会社と契約を結ぶよう斡旋(あっせん)する。
家の購入者や賃貸住宅の入居者は、ガス会社が設備を所有する場合、利用料を毎月のガス代に上乗せして払う。料金の内訳の説明はガス会社に義務づけられておらず、水準も差がある。十分な説明を受けず割高な契約を結ぶ人が多いという。国民生活センターに寄せられるLPガスについての苦情や相談は2020年度に約2千件あった。
北海道生協連などによる20年秋の調査によると、学生向け賃貸住宅のLPガスでは、従量料金(月5立方メートル)は業者間で最大2・3倍(差額4533円)、基本料金も同2・4倍(同1485円)の開きがあった。
一方、LPガス大手によると、戸建てでは設備の利用契約期間が20年間などの長期に及ぶこともあり、「解約時の違約金は20万円程度が多い」(幹部)という。
消費者は地域のLPガス会社と自由に契約できる仕組みだが、ガス会社はこうした慣行と違約金で顧客を囲い込んできた。都市ガスの料金は長く国の認可が必要で、自由に価格を決められなかったため、このような慣行は広がっていない。
こうした慣行について、業界を所管する経済産業省はかねて問題視してきた。17年にはガス会社に対し、ホームページなどで料金体系を明示するよう求める規約を制定。今年6月には不動産業界を所管する国土交通省と連携し、集合住宅を紹介する際に料金体系を説明するよう求める通知を出した。ただ、慣行自体の見直しは求めておらず、規定や通知は努力目標にとどまる。
全国LPガス協会は「本来は設備の費用を混ぜず、ガス料金として契約すべきだ」としたうえで、「ガス会社は住宅会社の下請けのような存在だ。費用負担を求められたら、のまざるを得ない」と説明している。
家庭ごとにボンベを設置することが多いLPガスは契約先を自由に切り替えやすい仕組みだ。業界の慣行に詳しい難波幸一弁護士は、不動産会社とガス会社が消費者のいないところで契約内容を取り決め、ガス会社同士の競争が阻害されていると指摘。「ほとんどの消費者が高い料金で契約し、疑問すら持つこともないのではないか。経産省も不透明な契約慣行を廃止するよう指導すべきだ」と指摘している。(朝日新聞20221230)
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